オデュセウスの忠犬 アルゴス

・・・は、口の悪い人には、ありきたりな忠犬の挿話に過ぎないかもしれない。でも、ほろっとさせるいい話です。人生の機微なんて、あんなもんかと思わせます。*1
そういえば、我が家の忠犬トンちゃんの、わたしがひと月ほど長きの出張に出た後、久方ぶりに帰った時の出来事。
「トンちゃん!ただいまっっっ」
喜ぶ私をきょとんと眺めたトンちゃんは、しっぽを数回お愛想までに振って、首を傾げて固まったのでした。
その時、判ったんです。
私が居なくなる事で、自分が家で両親に継ぐナンバー3の地位を得たと思っていたのに、
「なんでそこに居るの・・・」
と思っていたって。
犬も疑問があるときは、首をかしげるから面白いもんです。
そんなことは兎も角、なついて来たと思ったら、目やにをとってるだけとか、やめて欲しい。
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最近の“熱い挿入”の内容に引っかかったので。
オルガンの話は、

わが魂の安息、おおバッハよ! の商品写真  わが魂の安息、おおバッハよ!
著者: 鈴木 雅明
出版社: 音楽之友社

なんて読むと大変面白いです。
しかし、タイトルがなんか凄いですよね。門外漢が手を出しにくいというか。門外漢は手を出さないからいいのか、、、
でも、これバッハ好き、音楽好きのための書籍と思ったらもったいないです。音楽との関わりだけでなく、もう文化を持つとはなんぞやと考えさせられます。だから、好きなものはなんであれ、大変啓発的な内容であるはずです。
日本で竜笛やら太鼓やらの伝統的な、音楽でなくてもいいですね、日本画でも障子の張り替えでも、そういうことに興味を持つ方が読まれても共感することが多いと思います。
儲かった会社が不景気になるとうっちゃるようなメセナなんぞじゃない、「自分の文化」を考えたい人には誰しもおすすめです。


カラヤンについては、今年没後20年でいろいろあるとは言え、名ソプラノ ビルギット・ニルソンの自伝

ビルギット・ニルソン オペラに捧げた生涯 の商品写真  ビルギット・ニルソン オペラに捧げた生涯
著者: ビルギット・ニルソン
出版社: 春秋社

ご一読をすすめます。
ニルソンも相当カラヤン嫌いだったとわかる筆致ですが、いまだにまことしやかに語られる「凄さ」も随分裸の王様だったんだな、、、と。この一冊をすっかり信奉するしないは兎も角、いろいろ考えさせられます。例えば、オペラのリハーサルで、「凄さ」であったらしい、
・照明を落とした演出がどーこー
・身振り迄自らの審美感で指導してどーこー
・独自の効率的リハーサルがどーこー
等々が、どんなもんだったかなんて話が出てきます。
「音楽に捧げた生涯」なんていうと、生真面目な本だと思いますけれど・・・勿論、プロフェッションには真面目ですが、この自伝自体は愉快に読ませますのでご心配なく!
本国でユーモリスト賞を獲得しています。20世紀中頃のさまざまな名指揮者・名歌手の道案内としてももってこいですね。


CD評などを気にせず、この手の書籍から、のんびり聴くものを増やすのが、急がば回れの良い方法とつねづね思います。


好きでも嫌いでも気にしないでも、なんでもいいのですが、音楽のことなんて関係ない・・・という方も、もし、ちょっとお読みになるといろいろ面白い発見があると思います。*2


・・・長くなりましたがついでながら、クラシック音楽というと、「魂の」「情熱の」「捧げる」「深奥」「鎮魂」だなんだとセリオーソな言葉が並ぶのなんとかなりませんかね。

その方が商売になるのかどうか知りませんが、滑稽です。

*1:人生の機微って書きましたが、自分でもなんのことやら判りません。

*2:敢えて、必要なさそうなものに時間を割くというのも、一つのhow toであります。