能を観て来たよ!− 番組:狂言『末広』・能『羽衣』観世九皐会

先日、実家に近い某県県南に於いて、http://d.hatena.ne.jp/sergejO/20081208/1228738407 で、「良い声だなぁ」と書いた方の公演があったので観て参りました。愚拙至って無教養で、能の舞台は物心ついてから初めてでしたが、これが面白いもの。

どんな様子か知りたいという方もあらばやと、ちょっとご報告致しましょう。

私が観た会場はよくある市民ホールといったところですから、1000人ほど入る処。席の8割は埋まって居りました。殆どは60以上の方で、それ以下の方は2割居ないのでは?舞台は平らですが、簡易的に橋懸かりからなにからとしつらえて居ります。

番組(プログラム)は以下の如く。

  • 開演直後 観世喜正氏のトークによる番組紹介(約30分)
  • 狂言『末広(すえひろがり)』(約30分)
  • 15分休憩
  • 能『羽衣』(約1時間。1割から、1割五分ほど本を省略)

そうそうチケット代は4,000円。東京でも通常はそれにプラスα程度の価格です。普段お使いの矢来能楽堂は4〜500人程度の会場とのこと。

なお、当日の出し物の脚本(謡本)が売られて居りまして、私も『羽衣』の本を入手。2,000円でした。毎回、これを集めるのが、一つの楽しみにもなっているのでしょう。その後、ついでに実家の棚を調べたら、謡本が幾つか出てきました。

その中身はこんな感じで・・・と写真をお見せしたいのですが、今現在「写真を載せて良いですか?」と確認中。お返事お待ちしているところで写真なしにて悪しからず。いや、見ず知らずのわけのわからんブログ書きから、いきなりそんな問い合わせを受けて、先方もお困りかも・・・此の場を借りて、平にご容赦を。

さて、その謡本。字は数頁読めば検討がつくので、困るとしたら幾つかの言葉が判らない程度でしょうか。とは言え、仏教用語だったり何なりですが、巻頭の辞解と称するところに、解説が見つかります。これが、掛詞の類いも懇切丁寧に教えてくれて、これを読み続けるだけで、相当の日本古典文学案内になると思われます。文章は難しいものではありませんが、芝居で聞き取るのも難しいでしょうから、脚本の知識は前もって必要となるのでしょう。

序でながら、この観世九皐会には、のうのう能という企画公演もあって、そこでは別途初心者向け講座があって、そのテキストがこれまたよくできていて、感心します。これもまた黙って写真を載せるのは躊躇しておりますので、読者の方にはお許しあれ。

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そんでもって!といきなり気楽になりますが、感心したのが、シテの観世氏の舞台前トーク。

  • 声がよく通る
  • 落ち着いている
  • 言葉が丁寧

これだけで、十分感動できます!今時、こういう話&話し振りも中々聴けないので、これだけでも一度聴きに行く価値は十分ありでは?

勿論、本番の舞台でも、この方、ほんとに声が宜しく、面をつけない番組などは特におすすめでしょう。外人タレントと違って、国内の方は、公演は始終ございますから、ぜひどうぞ。

『羽衣』という話は、よくある羽衣伝説をテーマにした物で、私の服を返せ、いや、返さない。じゃ、返してくれたら、御礼に舞をまったげましょう。とただそれだけの話。しかし、舞台前トークで、『羽衣』の一番寛容な、

 いや疑ひは人間にあり 天に偽りなきものを

のフレーズを、同氏が「皆様もご一緒に」と、まずは手本を聞かせて呉れたのですが、これだけでほれぼれしました。

『羽衣』がいつ成立したものか不明だそうですが、時の為政者が観た物であれば、あの一文は非常に力の強い言葉だったのか、、、などと勝手な想像を致しました。

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さて、こちらが気になるのは、歌舞音曲のの部分です。

この『羽衣』、「東踊り」が脚本の中のクライマックスですが、昔日の舞台では舞で楽しませる部分がもっと強かったはずと思います。

といって、海外のように派手に手足を動かす踊りではないはず。

では、どうして、かつての日本で「舞の名人」と賛嘆の対象になったか・・・などと考えて、おもしろうございました。

手足広げてバランスを取るってのでないところに、ポイントがありそうな。