Within their circle they are clever enough. But − Wittgensteinの日記から

唐突ですが、読んだ本やwebsiteから面白かった一節の為の新カテゴリー、

  • 興味や感心を持った言葉・考え方

を創設しましたので、第一回。

第一次大戦にbreakthroughを求めて志願従軍したヴィトゲンシュタイン陣中日記から。自分の周りの人々について。

The people around me are not so much mean as appallingly limited.
This makes it almost impossible to work with them, because they
forever misunderstand. These people are not stupid, but limited.
Within their circle they are clever enough. But they lack
character and theirby breadth.
from The Duty of Genius(A Biography by Ray Monk)


拙訳:
私のまわりの人々は怖ろしく限定されているという程に、愚劣
なのではない。此が為、彼らと仕事をするのは殆ど不可能である。
何故ならば、彼らは永遠に考え違いをするからだ。彼らは馬鹿なの
ではなく、限定されているのだ。自分の生活の環の中では、彼らは
充分に賢い。しかし、特質 character に欠けるものがあり、
それ故、広がり breadthにも欠ける。

1916年5月8日の手記とのこと。

利口か愚劣かについて、Hardの差はない、ないしは、Hardでなくても、行動原理なり法則なりに差はないでもいいですが、そこが面白い考え方かなと。”ベースが違う”から議論を始める場合と、”ベースは同じ”で議論を始める場合とでは違う語りになる。

これを知ったのはRay Monkによる伝記。発表当時評判になったもので、私も発売直後、書店で偶然見つけ、面白くて比較的短期間に読み終えました。未読でしたら、是非どうぞ。英語はそれほど難しくないですし、日本語訳より安上がりでいいです。

内容もややこしい哲学話まで至らないところに抑えてあって、それで居て、読者の考えをさまざまにゆさぶる。ヴィトゲンシュタインの考えが難しいと思った場合でも、そのライフスタイル、行動だけ追っても面白いものです。

Ludwig Wittgenstein: The Duty of Genius の商品写真  Ludwig Wittgenstein: The Duty of Genius
著者: Ray Monk
出版社: Vintage

私は上のVintage版を買いましたが、洋書には中身は同じだけれどペンギン・ブック版もあります。
為替で価格に差が出るのかな・・・なんにせよ安い方でどうぞ。

邦訳はあるけれど高いです。大事な問題を扱っていながら、中学生でも読めるほどの書き方で、しかも面白いのに勿体ないです。

ウィトゲンシュタイン 天才の責務 1 の商品写真  ウィトゲンシュタイン 天才の責務 1
著者: レイ・モンク
出版社: みすず書房

ウィトゲンシュタイン 天才の責務 2 の商品写真  ウィトゲンシュタイン 天才の責務 2
著者: レイ・モンク
出版社: みすず書房

文庫化して欲しい・・・