NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 - 海軍反省会

2009年8月9日〜11日にわたって三夜連続で放送されている

NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言

http://www.nhk.or.jp/special/onair/090809.html

皆様にもご覧になっている方が多くいらっしゃると思います。番組のホームページから引用すると、

戦後35年が経過した昭和55年から11年間、海軍の中枢・『軍令部』のメンバーが中心となって秘密に集まっていた会合である。70〜80代になっていた彼らは、生存中は絶対非公開を条件に、開戦に至る経緯、その裏で行った政界・皇族・陸軍などへの働きかけなどを400時間にわたって仲間内で語っていた。

この400時間にわたるテープが、どうして表にでたか。みなで持ち回りで保管していたけれど、物故者も多くなり、このまま埋もれさせてもしょうがないと、メンバーの総意か総意でないかはともかく、表に出すことを決意した様子。

今回、NHKNHKの視点で、三夜に亘ってのドキュメントとして編集して放送中ですが、時間的な制約もあり、この三夜でくみつくせる内容かどうかはよくわかりません。今後さまざまな形で資料として取り上げられるのでしょうが、わたしなど生の記録が閲覧しやすい環境を望む者です。

最初の10回分は書籍化されており、私も早速注文したところ。

[証言録]海軍反省会 の商品写真  [証言録]海軍反省会
編: 戸高一成
出版社: PHP研究所

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日曜、月曜の放送を見る限り、なんで物量が圧倒的な国を相手に、あのような戦争をはじめてしまったのか・・・についての、話はあまり関係なし。*2 番組を見て、海軍の軍令部(海軍の参謀本部といったもの)が戦争をはじめた・・・と思う方はいらっしゃらないかと思います。戦争原因については、軍だけって話はなくて、政治家も官僚も、民間人だって、いろいろ蠢いていた訳で、そこに他国の思惑も諸々とあるので、これはまた別途考えるべきでしょう。

この番組は、はじまった戦争に対して、「もう少しやりようがなかったのか・・・」という辺りを、当時の海軍の中堅が語りあったものと思うのが宜しいようです。

その中で、

  • 情報秘匿
  • 無責任体質 / 事なかれ主義
  • 人命軽視
  • 人命軽視どころか滅びの美学、タナトス発動としかいいようのない欲望 その他もろもろ

の原因が語られますが、それだけ見ると目あたらしいかどうかは確かに疑問。ただし、当時の関係者の口から語られると独特の生々しさがあって、いろいろ考えさせられます。「一億層玉砕だとはしゃいでいる連中も居た」などと聞くと、そんな欲望をもった人間が居た・・・ということに、人間にはそんなやつも居るとは判って入るけれども、あらためて驚かされます。

ついつい、個人名で「誰それが悪い」になりがちですが、番組の感想をほうぼうのブログや掲示板に漁ったところ、「いまだって変わりない」「いまの官僚も政治家も、、、」「私企業の中だって同じだ」といった意見が散見され、わたしもまったく同感でした。勿論、誰それが悪いのですけど、そういう人物およびそういう人物の考えを採用してしまった過程は、個人的問題とも言い難いので、そこを考慮して、対応を練ることが大事となるのは、言う迄もないことです。*3

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月曜の放送は、特攻が議題。番組を見ていると、「戦果はともあれ死力をつくしていると見せなければならない」ということかなと。これは「戦果はともあれ死力をつくしていると見せかける人間が出世する」と言い換えられますか。でもそんなアピールに執着しているのは、作戦を立てて、命令している人間です。死ねと言われている飛行士ではない。爆弾とともに人間を敵艦に放り込みながら、組織内の自分の保身を狙う・・・人のやることとは思えません。戦争に負けたら負けたで、国を再興させるにも人がいるのに。

・・・こんなことを思うと、どんな形態であれ組織に所属した人は、自分にもまわりの人にも心当たりがあるかも。

明らかに能力的に劣っているのを、一生懸命さでアピールしてかわいがられようなんて人は山ほど居ります。そして、それを評価してしまう上なども。

いまの会社はさすがに殺しはしないものの、およそ無駄な残業に資料作り、「気の利いた」人間に見せる為の太鼓持ち争い。社内各部による評価査定なんてものが、社外交渉で利益をあげる者より、社内でそつなく風並みを立てない鵺をより評価する。気付けば組織が立ち腐れ。殺しはしないといったけど、過労死はしてますね。大会社に行くほど鬱病が多い。そりゃそうだ、やっていることに意味がないんだから。*4

結局、

 普通に合理的に考えて、まともな意見が通ればいいだけの話が、なんでうまくいかなかったのか・・・

なのですが、これ戦争のはるか前段階から問題があって、

 要するに頭のおかしい連中に組織牛耳られたらダメ

なのかなと。余りに当たり前だけれども、そんなに考えられていない問題かもと思います。まともな人は、面倒ごとを避けてしまって、無理を通せば道理が引っ込むを看過している部分が強いのだろうと・・・

*****

まともでない人のやり方は、古今東西主義主張に関せず、

 徒党を組む→都合いい事だけ宣伝→要所・要所に金を配る→それでもダメだと、スキャンダルなどで脅す→暴力・殺す

であることは、はっきりしているのに、存外対策が打てないのはなんでかな・・・とそんなことを思うだけで、まともに考えはじめることもできない自分もふがいないですが。*5

*1:2016年某日注:この後もおよそ年一冊のペースで、反省会の文字おこし・書籍化が行なわれ、現在第九巻に至っております。

[証言録]海軍反省会 9 の商品写真  [証言録]海軍反省会 9
編: 戸高一成
出版社: PHP研究所

*2:あったことはあったのですが、番組で放送された部分だけでは、なんともというところ。

*3:といって、何事もシステムがしっかりしていれば・・・というのも運用次第の話で、あまりシステムまかせでかえって身動きしにくい状況など考える私はシステムがあまり好きでもありません。人が人を見るとプロセスは、やっぱり、忘れてはならないことかなと。

*4:各部署の間の無駄を省ける協力なリーダーがいないとダメでしょうね。いい加減でずるい保身家ほど共同して、情報の抱え込みや、他部書との押し付け合い、責任回避しますから。ブラックボックスつくれるような隙を与えちゃダメ。

*5:世間ではこちらの方が有名ですが、わたしには手際よく整理されて、抽象的な言葉で説明されたものを見せられてもまったく実感がわかず・・・。あまりに整理されたものから学んで、「わかった」と感じる人ってのもなんだな、、、と。上の反省会のようなごちゃごちゃした現実をじっくり読んで自分で問題点を見つけてみる方が好みです。なんだろ人間性の闇に触れてない気がします。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) の商品写真  失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
著者: 戸部良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生ほか
出版社: 中央公論社