先日、アラビアのロレンスが出たついでに − 数時間の砂漠体験記&チャールズ・ダウティ

中東で仕事がしたかった・・・からやっちゃったのは、小さい頃に観た、この映画の印象。

アラビアのロレンス [SPE BEST] [Blu-ray] の商品写真  アラビアのロレンス [SPE BEST] [Blu-ray]
監督: デビッド・リーン 出演: ピーター・オトゥール, オマー・シャリフ, アレック・ギネス, アンソニー・クインほか
販売元: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

実際、アラビアに行ってみると、映画の通りと思う所もあれば、そうでないというものもあり、時代が変わっているから、まぁそんなもの。そんな風に、「違うかな」と思ったものの一つが、砂漠の印象。

一つ思い出せば、確かサウジ・アラビアのどこかの砂漠。何年も経つと記憶が曖昧です。仕事仲間の運転手に

「砂漠ってどこにあるの?」

「どこにでもあるよ」

「そりゃそうだ!よし、ではいってみよう!」

自分が行けるようなところだから、とんでもない死地なんぞではなく、端っこでは現地人がランドクルーザーを乗りまわす姿もあり。それで、何時間か貰って、太陽だけを頼りに一直線に歩いて、また戻るを試みた。

「あまり行き過ぎるな。峰だけ歩いてくれ、見てるから。」と運転手。

では、なにが違うか。当然、うっとりさせるBGMなどは無し。ただ、風の音の強弱だけ。

しばらく歩くと、端っこで遊んでいる皆々も何も見えなくなり、おぉこりゃ凄い所だなぁ・・・と。

砂が舞い上がっておらずとも、じっと観れば、軽い風に飛ばされて、砂は低いところを終始流れる。振り返ると、ちょっと向こうの自分の足跡も見えなくなっている。辺り一面同じ光景でもあるし、幾分不気味。

「道知ってる人でないと、入るところじゃないよな〜」

映画は、当然、俯瞰撮影や遠景で映すものだけれど、一人でその中を歩く身にとっては、自分の視界しかない。ぽつーんと一人残される感じで、そうなればいろいろ考えることもあろうかと思うと、砂が鬱陶しい、歩くと足重い、ほんと景色かわらん!暑い!と些事ばかり。

縫い目や何からいつの間にか砂が入って、上着が重くなっている。その砂は実に細かい。向こうの連中が、一枚布のスポーンとした服を来て、ターバン巻くのも判る気がする。それなら、脱いで叩けば砂が落ちる。

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と、そんな調子で暫く歩いているうちに、はたと気づくと陽光が弱まり、「こりゃまずい!」と一目散に帰ったのでした。←以下、語調変えますが

「どこまでいってたんだ!?暗くなったらどうしようかと思ったよ」ニコっと、笑う運転手にタバコを差し出しました。

そうそう、ちょっと砂の中に手を入れると、中はひんやりと涼しいけれど、そんな話を南アフリカの友人に話したら、あっちの砂漠(隣のなんとかいう国にはあるらしい)は、砂の中に毒蛇がいるので、おちおち足もおろせないとかなんとか。

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「砂漠と言えば、こんな本を読んで、恐ろしい気がしました」

と、ある方が教えてくだすったのが、

大唐西域記〈1〉 (東洋文庫) の商品写真  大唐西域記〈1〉 (東洋文庫)
著者: 玄奘 訳註: 水谷 真成
出版社: 平凡社

大唐西域記〈2〉(東洋文庫)大唐西域記〈3〉(東洋文庫)ゴビ砂漠を亘るのは多分、一巻なんでしょう。

東方見聞録 (1) 東洋文庫 (158) の商品写真  東方見聞録 (1) 東洋文庫 (158)
著者: マルコ・ポーロ 訳註: 愛宕 松男
出版社: 平凡社

東方見聞録 (2) 東洋文庫 (183)

読みたいけれど読んでいない本の多さに・・・

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砂漠もの、ないしは、サウジ・アラビアものに関するわたしのおすすめは、

Wanderings in Arabia: The Authorised Abridged Edition of 'Travels in Arabia Deserta'  の商品写真  Wanderings in Arabia: The Authorised Abridged Edition of 'Travels in Arabia Deserta'
著者: Charles Doughty
出版社: I. B. Tauris & Company

ちょっと書見をという方には、こちらをどうぞ。

http://www.archive.org/details/wanderingsinarab01douguoft

1880年代に、イギリスの詩人チャールズ・ダウティが、ダマスカスを出発して、およそ二年の間、アラビア半島ベドウィンの間でたった一人の西洋人として過ごした旅行記。旅行記といっても、人物・風物の観察が楽しく、ダウティの文章、文章から感じられる人間性等々、楽しむだけでなく、さまざま考えさせられます。

多分、上のペーパーバックにもついているはずのアラビアのロレンス(T.E.ロレンス)によるIntroductionがまた佳品となっております。「アラブを知れば知るほど、この本に見つけるものが増える」という賞賛ぶり。

It is the true Arabia, the land with its smells and dirt, as well as its nobility and freedom. There is no sentiment, nothing merely picturesque, that most common failing of oriental travel books.

など実に!という指摘です。

He says that he was never oriental, though the sun made him an Arab

というくだりなど、ロレンスの仕事を考え合わせると、あぁそうかと思わせます。

ダウティの人物について簡潔に描写した部分も奇麗です。

He was book-learned, but simple in the arts of living, ignorant of camels, trustful of every man, very silent.

いまのサウジに関して、この頃のベドウィンを持ち出しても致し方ないですが、なんにせよ面白い読み物です。英語の勉強がてらに機会があればどうぞ。

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ネットで読めるダウティに関する比較的長めの文章は、

http://www.saudiaramcoworld.com/issue/196904/the.obstinate.mr.doughty.htm

http://www.litencyc.com/php/speople.php?rec=true&UID=1294

後者は会員にならないと全文読めませんが、この部分だけでも面白いです。*1

*1:後日注:映画『アラビアのロレンス』は英国のやったことから目を反らすようなもんだろう、という指摘がありまして、、、大部ですがほんとに面白かった。

赤い楯―ロスチャイルドの謎〈1〉 (集英社文庫) の商品写真  赤い楯―ロスチャイルドの謎〈1〉 (集英社文庫)
著者: 広瀬 隆
出版社: 集英社

この本は実にさまざま調べていまして、例えば・・・われわれは90年代ころから散々持ち合い株は行けない、家族主義じゃ行けない、公開だ!社外取締役だ!とやられたもんですが、欧米の会社を辿った大元の持ち株会社などは、家族主義、秘密主義、株持ち合い・・・となかなか香ばしいです。
そもそも、世界中のめぼしい会社の株を取得する為に、やったことで、まんまと日本も引っ掛かったのでしょうね。ないしは、率先して先方の宣教師になった日本人もいた・・・
他にも、イギリスで株奪取乗っ取り、会社の資産売り払いというハゲタカ行為をはじめたなにがしなる男がありまして、この本の中で、○○家の者として出て来たり、、、。眉唾なのかどうなのか、なんにせよご一読を!