水処理施設の国際入札:NHKクローズアップ現代 − 最初の会社の仕事を思い出す

TVに文句ばかりつけているけれど、掲題の番組はまーまー良かった。あーゆーものを放送していればいいのに・・・最初の会社はプラント関係ではないけど、耐久素材メーカーでほうぼう入札で飛んでいたので、あのような内容はなつかしい。番組の内容は簡単で、

  1. 水処理施設は、単純には海水の淡水化プラント。これの需要が世界で増していて、有望な次世代ビジネス。ただし、水を作るだけでなく、上下水道を併せた建設からその後の一括管理も全部含む形態が国際入札では主らしい。
  2. 市場は、欧州の先進国からアジア、中東、アフリカまで多数。将来的に水の供給逼迫が予想されるし、生活には絶対必要なものなので、景気にもあまり左右されない(予算の増減があるから、そうはいかないと思うけれども)。
  3. フランスの水処理会社が大変強い。
  4. 対して、こういった国際入札で、日本は素材のシェアは高いけれど、この事業全体の仕事をとれない。そもそも、応札できない。なぜなら、日本では、上水管理、下水処理等々を一望に見ているのは公営会社。民間会社はそれぞれ個別の専門のみ。水処理プラントの入札では、上下水道もろもろに関わる一括管理を委託されるので、日本の民間会社では全体の運営のノウハウがない。部品だけだと、買いたたかれる。

    そこで、日本はこれから、官民一体でがんばろうとしているそうです。

国際入札の話で、もしかしたら、ぴんと来ない方もあるかと、すごい簡単に補足すると、以下の通り。わたしも10年こういう話から離れて、商社の友人に最近の話をちらちら聞くのみで、いろいろ古いかも知れません。

1) つまり、プラントを作って売って終しまいではなくて、メンテナンスも含めた運営で利益を上げる商売。入札は、その運営会社のスキームをいろいろな入札参加者が出して、一番効率的な案が採用されて、建設・運営を任される。

このビジネスの全体から見ると、その中の素材だけ売っても小さいよな〜ですし、そのプラント運営者は、素材産業は買いたたこうとするので、日本としては面白くない(車屋→部品メーカーと一緒)。

もうちょっと細かく言ってくれないと、資金がどうとかよくわからないのですが、発注元(インドだったらインド)が資金を出したり、入札参加者がファイナンスも全部自前で用意したりいろいろあるはず。

2)市場は、どうなんでしょう?欧州もあるとは言うけれど、結局は、アジア、中東、アフリカのこれから発展します国が主流なんだろうなぁと。これが先進国と発展途上国で、微妙に商売の仕方が変わるのは、あんだーぐらうんどな要素が入るから。簡単に言うと、

・売り手と買い手のそれぞれの国のせいじかのトップ会談で決まったり ← これ欧米が好む。日本もやるけど、日本がやると欧米がうるさい。

・買い手の国の有力者の一存で決まったり ← ここで日本は商社ががんばるよ

といったこと。プラント建設で大金が動きますから、、、と言えば、お察しがつくかと。それで、旧宗主国が元植民地なり、占領地に強いというのもなんとなく想像がつこうかと思います。先進国は社内の罰則規定もうるさく、ちょっとしたほんとにたわいないお土産も問題になったりするので、そういう要素が少なくなります。

10年ほど前から、汚職関連の法律が厳しくなっていますが(←相手国の公務員をたらしこんだら、逮捕しちゃうぞ!という方向で厳しくなっている)、10年前なら厳しく刑事罰を課しているのは日本だけという状況でした。その罰則強化を言い出したアメリカ自体は、ちょっとボランティア活動すれば、現場復帰できるいい加減な懲罰だったって話でした。
無論、そこまで考えた上での、スタンダード作りです。国際スタンダードはあくまで自分に有利な状況を作るための方便。海外商売で馬鹿正直にやる方が悪い。国内は厳しくしないといろいろ社会が歪むのでいけません・・・。こんなことごともいまはどうなんでしょう?

3)フランスの会社の強さとして番組でもちょこっと語られていた入札条件。入札条件に、「何年の安全運営実績」「何カ国での安全運営実績」などを入れられると、新規参入が制限されるので、先行者が強いわけであります。発注側も、なにかあったら自分の首も掛かる責任問題なのでこういうことは気にします。そんなこんなで「あたしは、未経験のチェリーボーイとはつきあえないね」と鼻にも引っかけて貰えません。この手の有利な条件の盛り込み方は、実績のみでなくいろいろあり。そこは書かない方がいいかな。でも、ちょっと考えればいろいろ思いつく程度のものでしょう。そのマーケットの最初の納入者になると、まーなにかと有利なのは、誰しも想像できる範囲でしょう。

こういった入札に関しては、この入札書類への仕込み(自分に都合の良い条件を入れてもらう)から、そもそも、どこにどんなプラント建てようという大元から、話に噛んでいるのが大事で、「入札出て来たぞー、じゃー書類準備しよー」ではもう勝負が決まっていたりします。今時はどうなのか、一見クリーンな入札は増えているとは思いますが、、、クリーンな入札が増えると、いい条件で投資資金集めたり、それこそ、安く建設する・効率的に運営するという勝負。

勿論、入札条件があまりに厳しいと、それはそれで「参入障壁」だと言われるので宜しくない。そういう入札条件を書かせたと判るといろいろ横やりも入ります。そこで、いろんな仕掛けがあって、間に入札書類の面倒を見るコンサルタント会社が挿まったり、まーいろいろあって、その間でお礼(←お金)のやり取りも巧妙だったり←ヨーロッパ系が好む手口。

似たような話で、ODA資金の話があって、ヒモ付きはいけないなんてことが建前。ヒモ付きとは、うちがお金だすんだから、うちの国の会社の製品買ってね。といったこと。これも10年前くらいから、それだと不公平だ、非効率だとうるさくなったのかしら、、、それもまじめにヒモ付きをやめたのは日本だけって感じでしたが、いまはどうなのか。。。

4)水処理関連の日本の公益事業体がどんなものなのかまったく検討つきませんが、多分、そこが打って出るということもないでしょうし、いろいろ大変だろうな〜と見ていて思いました。語学の問題もあれば、文化慣習の違い、それこそ、海外との仕事は、上下関係などかなりシンプルで、日本的商慣習に慣れた人ではいろいろと大変なもの。日本国内向けの遠回しコミュニケーションでは簡単な情報のやり取りさえ不都合が出ることもあります。「俺を抜いて勝手に連絡したな・・・」とかなんとか面子云々を言ったり、「あなたがwindow personですから」と三遊間を拾わない人が増えれば、国際入札のスピード感についていけるかどうか・・・*1

とは言え、うまく行けばいいな〜と。よその国からお金ぶんどって来るのは楽しいですから。←やり過ぎはともかく

こんなもんでしょうか。

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4)補足。間に立つまとめ役が、商社さんだと思うのですが、彼らも「右から左に流しているだけで儲けやがって」なんてメーカーは言うけれど、大変です。わたしの仕事などでは、仕込みも、ネゴも、回収もこっちでやって、それなのにコミッションとんのかよ〜ということもありましたが、上の仕事なら、中心のまとめ役で活躍・暗躍せざるを得ない。

面白いのが、商社さんは入りたての海外経験なしで電話まわしてるだけの東京本社の若いのは態度がでかい。実際、なんもしてないのに。駐在してお店持って苦労された人は、面白いし、やっぱり、苦労されただけあって敬服すること多々であります。

端から見ていて、その駐在商社さんが大変なのは、実はどうでもいい接待的な旅行代理店仕事で、これはメーカーが甘え過ぎな部分が大変大きいと思う。ほかの仕事も勿論大変だけど、それはほんとに仕事だからしょうがない。でも旅行代理店仕事は・・・。私何ぞは、若造だったので、接待ランクも低いし、私が居た会社自体も単年の商い額は少ないので、まー軽くみられていたのでありますが、、、。私が担当したとある国でも単年度30億円くらいの規模*2

商社は商売の額に対してコミッションを取るので、当然、商いが大きい方の世話を焼く。実質、なんもせずに、コミッションだけ取るのが理想。いずれにせよ「露骨に手を抜きますよね〜」と冷やかすと、「いや〜〜、でも、そちらは楽なんですよ、、、ほんと、お世辞でなく」と言われたことがたまにありました。

それはくだらない話で、メーカーの出張員が下のお世話の接待でぎゃーぎゃー要求したり、自分の入札書類の英語を書けないから商社に頼んだり、「使ってやってんだぞ」とまー清朝の役人ばりの態度に出たり、といったことを私のいた会社はおよそせなんだからであります。会社の入札書類なんて、自分の会社で書く方が中身は間違えてないわけで、大学まで言って入札書類の英語書けませんなんてあるかって、、、自分で相手の技術者に電話すればいいものをいろいろ間に人を挿もうとしたり、、、(危ない地域は除いて)子供じゃないのに空港からホテルまでいけないとか、昼は日本食でないといやだとか、、、

旅行代理店の添乗員さんの苦労と一緒です。不憫です。自分が主従の主だと思うと、限度ない人が多いがあれはなんなんでしょう。*3

風俗なんて自分で探していけよ、こわいなら行くなよ、、、案内してくれなかったからって、日本帰って悪口いってんなよ〜、という馬鹿げた話もあったり。ここら辺、日本もわれわれの世代になると変わるんでしょうか。変わって欲しいですね。人間関係での苦労は余計なストレスに過ぎんでしょうよ。。。

・・・と思ったものでした。

・・・そういう私は、当時、お子様だったので、商談終えると、某社の支社長さんと宗教談義や音楽談義ばかりしていたのが、なつかしーなーと。向こうも、気楽な坊やだと息抜きに良かったような、、、

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商売抜きにして、ちょっと心配なのが、発展途上の国も、自分でできないさまざまな事情があると思いますが、通信、水、銀行、食料は自前でできないと、、、って、そんなの家計と一緒ですよね。死活問題を他国に握らせるというのは、本来、避けることであります・・・*4

*1:私は海外式が楽で、20代でサウジの○○庁の役員の部屋に「ども〜!」とか。向こうも、若者には親切だったような。。。上役が行くと、すぐにお土産をねだるけど、坊やにはそういうみっともないことは言い難かったのでしょう。わたしは海外営業だったのですが、官公庁なりとおつきあいしている国内営業の人の話を聞いても、なにを言っているのか、なにを言いたいのか、ほんとに判らなかった。

*2:現代建設の仕事が、お国のデフォルトで回収が大変だった、、、といっても、結局、催促して「いつ払えるの〜」とやるだけなんですが。

*3:傍若無人に振る舞っておいた方が、あとあと言うことを聞かせやすいとか?類人猿以下のコミュニケーション方法って、結構、幅をしめているんですよね、、、

*4:だから、安易に経済的優位がどうのの理屈で、食料品特に主食をすっかり輸入品に明け渡そうとするエコノミスト(笑)って国賊だと思います。