候文に一〜二時間で手っ取り早く慣れる方法 − さすがネット時代で良いwebsite発見しました。

どもども。時々、このブログで候文を引用し駄文を綴って居りますが、思ったよりも読み難いと感じていらっしゃらないかと、そう思いまして、手っ取り早い解決法と参ります!

と申しましても、私の努力ではまったくございませんで、実の処は素晴らしいwebsiteを見つけたのでそのご紹介です。

候文と言っても、一次史料(資料?)ではなく*1、活字になったものを読むだけならば、読み方・綴り方のちょっとした癖が難しさの原因。しかし、型は大概決まっておりますから、それさえ読めれば良い話。

しかしながら、何ゆえか候文については、大概の本は読者が読めるものと前提を置いている。なぜだかそうなんです。国語辞書も古語辞典候文固有の事柄をまずもって扱わない、、、読める方が周りになければ自力で地道に慣れる他はない。

普通の古文より難しく感じる方があってもおかしくありません・・・

しかし!さすがはネット時代です。あり難いウェブサイトがあって、それを読めば、一〜二時間もあれば十分なのです。

拍子抜けする様な話ですが、早速。*2

たかだか2ステップです。

2016年某日注:Petroniusさんのサイトが閉鎖されたようで、ちょっと手直し致しました。



第一ステップ:下の二つ三つの頁をさらさらっと読む (15分〜30分)

第二ステップ:下の頁をじっくり読む。音読がなおよろし!(1時間〜2時間)

はい、できた!後は、実際に読む時に上のサイトを辞書代わりに何度か見返せばどうにかなります。音読は実に効果的です。じっくり読まずに、何度もただ音読するのも手です。

「し玉へり」と目で見てもどう読むのだかよく判らない、そんなときも音読をしてみれば、「したまへり」と苦もなく読めるものです・・・そうなんです!

この大船庵様作成のページは実に有り難い試みです。頻出語、頻出漢字、はたまた頻出癖によみがなをふってありますが、上の落穂集巻1〜2だけでも、今後の読書に可成り役立つもの。この程度までが、候文の共通知識と思って良いでしょう。

ここから先は、候文に限った話ではないので、漢和辞典・古語辞典と相談しながら

大修館漢語新辞典 の商品写真  大修館漢語新辞典
著者: 鎌田 正, 米山 寅太郎
出版社: 大修館書店

新漢語林 第二版 の商品写真  新漢語林 第二版
著者: 鎌田 正, 米山 寅太郎
出版社: 大修館書店

三省堂 全訳読解古語辞典 第四版 の商品写真  三省堂 全訳読解古語辞典 第四版
著者: 鈴木 一雄, 外山 映次, 伊藤 博, 小池 清治
出版社: 三省堂

また、漢籍も含めた日々の読書で地道に語彙を作って行く他ありません。*3

つまり、上の1〜2時間の努力以上は、王道がないので(←多分)、誰しも苦労するところ。そう考えてしまえば、かえって気楽にご自分のペースで読書を進められるものでしょう。「最初はわからなくてもしょうがない。みんなそうだった。」そう思ってのんびりいきましょう。それでも、10冊ほど読めば、随分楽になるものです。

とゆーことで、読書の幅が広がったら幸いです。例えば、

漱石・子規往復書簡集 (岩波文庫) の商品写真  漱石・子規往復書簡集 (岩波文庫)
和田 茂樹 編
出版社: 岩波書店

などは、これはもともと割と簡単で、候文ってほどのものでもないですけれど、それでも読み易くなりましょう。若き子規と漱石の熱いやり取り。親しき仲にも礼儀ありで、これがまたなにかとカジュアルでeasyな・・・EZな・・・いまどきには新鮮かつ「かくあれかし」と感じられるやも知れません。

龍馬の手紙 (講談社学術文庫) の商品写真  龍馬の手紙 (講談社学術文庫)
著者: 宮地 佐一郎
出版社: 講談社

などにもチャレンジできます。これは司馬遼太郎『竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)』を楽しんだ方には、ぜひというものでしょうか。序でに触れておけば、司馬の執筆時には発見されていなかった晩年の手紙が収録されて居りまして、それは近江屋の遭難一ヶ月前のもの。危ないから、本心ではここをでたいのだけれど、といった内容でした。

名将言行録 8冊セット (岩波文庫) の商品写真  名将言行録 8冊セット (岩波文庫)
著者: 岡谷 繁実
出版社: 岩波書店

名将言行録もいけてますね、はじめて聞いた話でも「これだ、これこそ我が国の姿だ」と感じるような良い話・良い判断が沢山です。

こんな風に上げると切りがないですが・・・*4

古本屋を歩くなんてことも楽しまれて下さい。和本や古文書など本格派は無理でも、活字になっているものがたくさんありますよ。我々が戦前の古本を楽しむようになれば、次の世代はミミズの文字の古文書を楽しむようになるやも知れませぬ。

英語が必須の世の中でも、英語だけやっていたらそりゃ外人の尻を舐めるだけではございませぬか。自国の文化に精通しておらず赤シャツ然とお追従するような輩をはたして向こうの人が有り難がるか・・・おだてて利用はするものの表には出さずに軽蔑することでしょう。

さてさて・・・

候文自体の成立は鎌倉期だそうですから、上の名将言行録よりももっと古い時代のものにもいろいろあたることもできます。まーなんです。そんなことをやってみると、やっぱり第二次大戦後の現代の文章は、美的というか音楽的というか、いまひとつ過ぎてかえって読みづらくなったりならなかったり・・・



こういった話にご興味を持たれましたら、Petronius・大船庵御両名様の頁にぜひブックマークを。



2016年某日注:

手直しでいろいろ見ていたら、候文あたりに留まらず、筆書きの古文書に詳しくなろうというサイトもちらほらでてきて凄いですね。
面白そうなものをちょいとご紹介。





・くずし字で楽しむ江戸時代の暮らしと文化 古文書ネット
http://komonjyo.net/index.html
サイト主さんが元はプログラム習っていた女性で、古文書読解を独学で始め、ついにはカルチャースクールの講師にまでお成りになったとおっしゃるから凄いです。内容充実。



歴史的仮名遣ひ教室
http://www5a.biglobe.ne.jp/accent/kana/kana.htm
こちらは開設からもう十年以上ですが、ときおり一つ二つの項目を読んでおくと、いろいろ身になります。付録がまた充実していて、各時代、各作品の仮名遣いの解説などなど面白い内容。





古文書読ませるサイトも充実したものが出て来ています。本年2016年の大河ドラマをおそるおそる見てしまい、真田太平記を美しく思い出した方も数多いらっしゃることでしょう。*5
その真田ですが、上田軍記がなんと、原文写真、翻刻、現代語訳で読めて、原文は異本まで紹介しているという・・・



・信州上田軍記 上田市マルチメディア情報センター(UMIC)
http://museum.umic.jp/uedagunki/index.html



すごい!!ですよね。翻刻もあるんですよ!!!わたし無教養なので助かります。

この同じUMICが作っているもので、真田氏史料が書状や古地図類まで見られるサイトが



・信州上田ロマン 上田市マルチメディア情報センター(UMIC)
http://museum.umic.ueda.nagano.jp/sanada/noflash/no_zero.html
ここ開いても、辿り着けない人が多いと思うのですが、「調べる」 →「真田氏史料集」と進みます。勿論、全部の書状が乗っているわけではないです。ぜひ今後全部載せて欲しい・・・



ついでに、



・上田古地図デジタルアーカイブ
http://museum.umic.jp/ezukochizu/



なんてものも。



この上田市の歴史関連のサイトは、せっかく素晴らしい内容ですが、置き場所があちこちだったり、ちょっと行き方が判りにくかったりと、アクセスやページ階層、ちょっとしたデザインの問題で、気付かず素通りされる方もあるんじゃないか・・・といらぬ心配であれば良いのですが。取りあえずは、見やすく分別して、三行説明をつけた一覧ページを付けて、各サイトの下部に関連サイトなどを上げておけばいいのかな。



*****


もうひとつ序でに



宮本武蔵 THE MUSASHI
http://www.geocities.jp/themusasi1/index.html 
これ宮本武蔵の一次史料の翻刻・現代語訳を載せて、さまざまに検討する凄い労力の掛かったサイト。私もかなりのページを読んで楽しみました。
口が悪い!もうちょっとどうにかならんかと思うけれど、そこを我慢なされば得るものが実に多いですよ!
ちょっと議論するにも、典拠の書状を欄外に引用する姿勢が素晴らしい。これ実際にやるのほんとに面倒なことで敬服致します。
こういうものがあると、歴史を語る時に限らず、なにか意見を形成・発表する際の優良モデルとなり嫌でも”遠慮”となりましょう。



*****


長くなった序でに書きます。



わたくしなんだかんだ NHK BSの英雄たちの決断 は好きで毎回見ているのですけれど、出演者がなにを根拠に自説を述べているのか、史料がなんなのかちゃんと挙げて欲しいです。せめて番組のホームページなどで良いので、各回当該人物の推奨史料・参考文献一覧など挙げて欲しい。

そういう態度をTVで示せば、粗製濫造のムック本片手に怪しい歴史語りする場合などでも、もっと気をつける人が増えるのではないでしょうか。怪しい蘊蓄合戦がいけないとは思いません。それも面白い。
怪しい資料を元にしても、面白い見方を引き出す人だってある。そういうものがあっていけないわけもない。
とは言え、そんな時でさえ、なにを根拠にしているか注意して、「吾妻鏡だけじゃわからないのですが、当時の公家の日記を二三読みますとかくかくしかじか」だとか、眉唾物なら「眉唾なんだけれど」「単なる思いつきだけどね!!」と一言言えるなら、いろいろ変わるもんだろう、と。



 こうであると仮定したならば、
 かれこれを典拠にすると、
 なになにである



と言えたら、推論の間違い・議論の平行線も解消することが多いと思うのです。典拠・前提が明らかでないからこその無駄な行き違いというのは意外に多うございます。

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書) の商品写真  天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)
著者: 磯田 道史
出版社: 中央公論社

磯田先生、万が一弊文をお読みになるようなことがございましたら、駄文でのお目汚しをお詫び申上ると共に、先生の御著書をちゃんと新刊書店で買って他人様に可成強く薦めているわたくしめの願いをぜひとも御一考可被成下御願奉候。



長くなりました
ではまた


*1:私も無教養なので、一次史料は日頃目にしておりません。一次史料というのは・・・ざっくり言いますが、普通は筆書きの手紙や日記、写本の類いで、なんといったらいいんでしょう、文章を読む以前に、そもそも何の字が書いてあるのかの判読が困難です。金田一耕助獄門島で、「達筆過ぎてわからない」「ミミズがのたくったような字で読めん」のあれです。

*2:明治文学はさして問題なく読める人にとって、一〜二時間。
明治文学でも旧仮名遣いだときついという場合は、問題はほとんどは昔の漢字でしょう。そんなもん数冊読めば大丈夫。漱石、二葉亭、樋口一葉泉鏡花正岡子規あたりのメジャーどころで、4−5冊旧字体で借りてきて、部分的にでもよいから、三日くらいひたすら音読すれば大丈夫。
目だけで読むよりも音読した方が類推が聞きます。旧字体での書籍を買うには、だいたいですが1970年以前の版で探すのが良いです。古書店旧字体を探しているからと確認した方がいいですよ。
どんどん古くなって無くなって行きますから、欲しければお早めに。そして、大事に扱って捨てることなどありませんように。
旧字体をなじむかなじまないかは日本語の体験を、日本語を自分が扱う際のニュアンスをかなりかえると思います。

*3:江戸期に入ってからの漢語的教養の席巻で、儒学に限らず、漢籍由来のややこしい言葉が多くなりますが、ほんとにややこしいのはその手の江戸期ものだけと思います。あれは、みんなかなり苦労して習熟していくものでしょう。

*4:この頃の軍記ものはみんな候文だったと記憶していたのですが、ちょっと本棚のあれこれを見直すとそうでもない。信長公記は一応候文。でも、それほど出てこないし、まったくややこしくない候文

信長公記 の商品写真  信長公記
著者: 太田 牛一 校注: 桑田 忠親
出版社: 新人物往来社

三河風土記はまったく候文なし。定価より古書が安いときは買い時です。

三河後風土記 正説大全 の商品写真  三河後風土記 正説大全
中山和子 翻刻・校訂
出版社: 新人物往来社

*5:特撮やセットがしょぼかろうと、ぜひ名演・脚本の妙を楽しんでくださいませ。ほんとうに魅き込まれます。苦悩がある、美しい行いがある。ひとりで夜中なんぞに見ていたら泣けます。この真田太平記のほかにも例えば、加藤剛大岡越前の第一部〜第四部あたりはぜひぜひとおすすめです。

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丹波哲郎, 渡瀬恒彦, 草刈正雄, 遥くらら, 夏八木勲, 紺野美沙子, 中村梅之助ほか
原作:池波正太郎 脚本:金子成人 音楽:林 光

大岡越前 第一部 [DVD]  の商品写真  大岡越前 第一部 [DVD]
加藤剛, 片岡千惠藏, 竹脇無我, 土田早苗, 宇津宮雅代, 加藤治子ほか
販売元: 竹書房