マツノ書店をご存知ですか?—山口県は周防市の古書店兼出版業

いつもの通り関係あるようなないような枕から。

一つ前のエントリーに書いたわいわいでは、黒さん(仮)の旦那が、「ふーーん、独立ってなにやってんだい?」と。それで説明すると、「在庫なし、隙間産業、、、基本自宅だね、よし。人数は?」「二人。マーケティングプログラマーみたいな」「二人なんだね、それはいい!実は効率的だよ、それ」と。なんで感心あるのか、聞いてみたら、「自分も小さい会社を運営して大変なことはよく知っている。だから、そういう話はうれしいんだ。でも、いいことだよ、自分でやってみるのは」と。まだ会社にする目処もたたず、単なるサイトに過ぎないので、恥ずかしい限りだけれども、こういうところはアメリカ人というか、外人というか、なんにせよ中々聞けない言葉で、(勿論、お世辞9割9部であるけれど)感心した。

無鉄砲をはじめる・・・と決めたとき、既に他界されたカナダ人の会社の友人に話をした際、「君はまだ若い。僕は君がここに居ると不幸だとずっと思っていた。失敗は避けなければいけないけれど、失敗できる人生は幸せだよ。いつでも困ったらウチに来れば、ビールなら奢ってあげるよ。」と。再三、呑みに来いと誘われながらも、急逝され、なんとも。

無責任なCheer Upとうがってみることもできるけれど、「ノせる」「相手を気持ちよくさせる」というのは、向こうの人のいい文化だと思う。

小規模でも、きちんとしたものになればいいな〜と精進せねばなりません。

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さてさて、そんなこんなで全然業種も違えば、なにもかも違っていながら、私にとってはなにか理想的な事業ということで、実は近刊の『彰義隊戦史』を注文したところでもありますし、いきなりながら、山口県は周防市のマツノ書店 http://www.matuno.com/ をご紹介です。

古書店にして、幕末維新や郷土史の復刻本の出版業も営まれている会社。ご存知の方もいらっしゃるかしら?

幕末・明治の古書を読むのが好きなのですが、これがいまは出回ることも少なく、出回っていても価格が高かったり、、、内容は大変面白いのに残念なところ。そんなところに、マツノ書店さんが、装丁もなにも良い品質で、印字も読みやすい復刻本を出してくれるのが大変有り難く、DMが来れば「今度はなにがでるかな???」と楽しみであったり致します。

オリジナルを尊重した箱入り装丁の浩瀚な書籍の場合、1冊1万何千円と高価になりますが、部数や古書での入手価格を考えれば、良心的でしょう。洋服だなんだのお金をちょっとけずって、何年かに1冊と、こういう変わった書籍を手にするのは悪くないと思います。

過去の復刻本は、http://www.matuno.com/kannkou.htmの頁にあって、私もそれほど買っていないのですが、宿利重一著『児玉源太郎や、山崎正董著『横井小楠傳』などなど、面白い読み物でした。

マツノ書店の復刻本に限らず、古書も含めてこういうものの何が面白いか?と言いますと、

この頃の文章がこれがもう面白い!:なんたって、旧字体ですから新鮮で気持ちよいものですよ!今時の文章は、良くも悪くも学校文法ルールに則ったものですが、この頃の文章はその点、綴りも自由なところがあって、文章の雰囲気が全然違うのが楽しいです。

司馬遼太郎好きであれば、そのあたりの話ですから楽しめること間違いなしですが、なにより司馬氏の引用元でもあって、興味を持った人物について、もっと多様な話を見つけられます:史実としての正確性がどうか?という問題があるものは確かにあります。逸話集と割り切るべきものもあるでしょう。とは言え、やっぱりどうにも魅力的なんですね。写真などあると、もう何と言うか、当人も奥さんも美しいのですね。みんながみんなではないけど、そこはもうご覧になっていただく他ないです。

結構、今にいかせる生活の知恵、ものの見方などもあって、読んでいながら私も全然実践できないのですが、興味深いものです。特に遠くを見る目というのか、そんなものに、感心致します。

さてさて、マツノ書店の最新のDMには、計画立案中らしい書籍が挙がっているのですが、これが感動もの!!『子爵谷千城傳』、『元帥島村速雄傳』、『大山元帥』などなどでありますが、私に超ヒット!!!だったのが、『立見大将傳』。司馬の

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫) の商品写真  坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)
著者: 司馬遼太郎
出版社: 文藝春秋

をお読みの方なら、グッと来るのではないでしょうか?ロシア軍の包囲でにっちもさっちもいかない状態で、悔しさのあまりテーブルを踏み抜いたという逸話・・・あの前後の話が大好きな場面の一つで、司馬氏が省いた話にさまざま出会えるかも!?と楽しみです。

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ここに書くより、直接ご連絡した方がいいとは知りながら、マツノ書店さんには、

は、ぜひ刊行いただきたい!(2008年11月29日注:下のMV様のコメントより、櫻井眞清著とするのは宜しくないようです。MV様にはご指摘深謝申し上げます。)

手に入り難いこの自体をなんとかせん!と

http://sakanouenokumo.hp.infoseek.co.jp/akiyamake.htm

というこれまた、実に立派なプロジェクトがありますが(いや、これはほんとに立派なことです)、やはり縦書きで読みたいではないですか!書籍である魅力というのは、やはり、代え難いものです。

まともな大学図書館なら置いてあるものですが、やはり、こういうものは自分の手にして読みたいもの。私は意地でも図書館では読みません。。。前者の秋山大将は、何年も前にやっとのことで痛んだ古書を見つけて手に入れましたが、後者は未だ手に入らず。。。ぜひぜひですね。

こういうものが、読まれないのはほんとに惜しいことです。勿論、美談を載せるものでありますが、こんなに奇麗な人があったのかと驚きでした。伝記秋山好古を読んで、その記述から、軍国主義的云々と感じるとすれば私にはさっぱり?こういうものが、それなりに簡単に手に入らないのは、なにかおかしくないかな・・・と思います。*1

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この櫻井眞清著『秋山好古では実に幸福な時間を過ごせました。この本を探し続けた動機は、ご想像の通り、司馬遼太郎『坂の上の雲』で、その人物に魅了されたからでありますが、、、あれをお読みの方は、日露戦争後の部隊解散時の記述をお覚えでしょうか?最終巻も最後の最後の部分。


やがて平和条約が批准されて、十月二十一日、かれの秋山騎兵団はその軍隊区分を解いた。

かれは凱旋にあたって兵士たちのために教訓歌のようなものをつくった。この人物は弟とちがって文才はなかった。しかし弟よりも情においていかにも江戸期の気分を残しており、その歌というのは、「連合艦隊解散ノ辞」のように歴史や国家の前途を論じたものではなく、

「別れに望んで教へ草、先づ筆とりて概略を」

という、一見おどけたような七五調で、田園や市井にもどってゆく兵士に処世の道をさとし、「自労自活は天の道、卑しむべきは無為徒食、一夫一婦は人道ぞ」とえんえんとつづいてゆくものであった。

この「おどけたような七五調」が読みたかった。これが強い動機でした。載っているかどうかは知らないで、買ってみるのもたまには良いことです。

そして、秋山好古大将傳記刊行會『秋山好古』に、この七五調は、ちゃんと全文掲載されておりました。大変美しいものでした。

 わたしにはこれが文学的でないとするのはまったくわかりません。「文学」を越えているというならわかる。

武勇伝なんて楽しんでいるけれど、到底自分には想像もできない、何年にも続く、圧迫、緊張、苦難があったわけで、死の床で、混濁した意識の中、何度もうわ言にしたのが、満州の地名と言います。そのような凄まじい死線を共に超えた部下に、戦いが終わるとなれば、あんな文章を書いて渡す。その精神のゆるやかさ・快活さ。こういうものに、文学的創造力が適うか?と思わせます。そう感じさせる程度の文学作品なら、自分に取って意味はないな、、、という指標となっているというか、なんというか。

では、以下に引用を

・・・と通常はなるところですが、これについては絶対引用すべきではなくて、いつかこの書籍を手にして、ページをめくりめくり、そこに出てきたときに、「あぁ」とお思いください。

p.s.:「理想の上司」って方々でアンケートされますが、私はいつでもこの人だと思うなぁ・・・

*1:好景気になれば、銀座にブランド屋が立ち並び、靴の値段が数倍になり、オペラの公演が増え。これはくだらないし、fatでしょう?二万円のジーンズを一番安い物にして、流行を追う時間を違うことに割いて、こういう書籍を手にする方がはるかにまともと思いますが、どんなもんでしょう。