中学生から!2008年 夏休み用その他の書籍案内です〜

中学生からかな?2008年 夏休み用の割と古典文学名作案内です〜と題して、

前々回 http://d.hatena.ne.jp/sergejO/20080727/1217098632

前回 http://d.hatena.ne.jp/sergejO/20080727/1217130339

と、いつも以上に駄文を綴りました。

「古典文学ばっかじゃなんだよ〜」という方も居られると思います。そこを敢えて、一つ二つ経験する。という姿勢は重要だと思いますので、お読みになったことが無くても是非トライしてねっ!・・・でありますが、古典文学に入らないものでも、ちょっとご紹介したいな〜というものを本日は!!

ぜんぜん読まないので、いきなり古典はやめてほしい・・・くらいの人向けで、たまたま思い出した面白くて、良いものを挙げた程度の話です。

人文思想系は別途なので除きますね。

 

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まずはエンターテインメント系で〜!

 

R.A.ハインラインの本『人形つかい』『天翔る少女』

R.A.ハインライン『人形つかい』の商品写真ハインラインというと、名作『夏への扉』や問題作にして映画の「愛と青春の旅立ち」の元ネタ『宇宙の戦士』などはさすがに読み手も多くて、その後、大作の『月は無慈悲な夜の女王』とかなんとかという感じ?

私がその他でも好きなのは、『人形つかい』『天翔る少女』

ハインラインというと、軍事政権好きで微妙に優生学っぽいのですが、あれはあの人の芸風ということで適当に「またいってらー」と読み流してます。あの人自身は、自律・自立といったものが一番大事で、素直に言うこと聞く人がかわいーなんて思わない人じゃないかな〜と。

『人形つかい』は、、、なんか左上の商品写真を見ると、表紙がえらいことになってしまいましたが(涙!ぶる〜)、、、、フィルムノワールな雰囲気で、人に寄生して意志をのっとる宇宙人が・・・という「あなたの隣人が知らぬ間に、、、」系のハードSFアクション&スパイ作品とでもいいましょうか?そこに記憶のテーマや親子の人情話が絡んで、結構、考えさせられたり、「いいこというよね!」と講談に涙するよーな雰囲気になるのは、いつものハインライン風。お薦め!

R.A.ハインライン『天翔る少女』の商品写真『天翔る少女』(英語版はこちら)は、ジュブナイル作品。おじさんに政治家を持つ、お姉さんと弟さんが、陰謀にまきこまれて誘拐されて、、、というストーリー。この弟さんがハインライン作品の理想的な生意気な子供にして、彼のビルドゥングス・ロマーンです。その弟さんに対しては、「お前そんなんでいいのか?」という周囲の疑問も、彼自身の微妙な心の成長や変化が書かれてあって、それが「みんないい人!なかよく明るい社会!」みたいにしないところがよろし!!必ずしも、評判がいいとは思わないけど、私は『夏への扉』(英語版はこちら ルビ訳シリーズというもので最初に英書を読みたいという場合心強いです)、『人形つかい』(英語版はこちら)、『宇宙の戦士』(英語版はこちら)の次にいつも薦めている作品です。

・・・まーなんだかんだいって、『夏への扉』が一番かもね!ですが。折角だから、英語でどうぞ!

 

次はいきなり絵画系ですが、、、

 

パウル・クレー『クレーの日記』

パウル・クレー『クレーの日記』の商品写真クレーは今世紀前半に活躍したスイスの画家。どんな絵を描いたかは、グーグルの画像検索で、パウル・クレーと入れれば、幾らでも出て来ると思います。

創作家がものした文章も、大概文章で創作してしまって、結構裏話が判りませんが、この『クレーの日記』はその点実に正直な心の内の報告になっているのではないでしょうか?私は頭が固いので、現代美術を見ると、画家の自己主張ばかりで「どーでもいーや」と思ってしまいますが、クレーはその点好きです。特に線。

この日記で、クレーが語ることで、面白いことは沢山あります。例えば、絵というものは書いている対象を映すものなのか?などという話。そうじゃないだろ?とは誰しも思いますが、だからって俺流アレンジすればいいってことでもないよね、、、とクレーが考えたのはどんな方向か、、、こういうのって、セザンヌが話していたところ(ご参考『セザンヌの手紙』)と共通で、私は『クレーの日記』を読んで、あーそーかと納得しました。

いまは古書しか手に入らず、今現在リンク先にあるマーケットプレイス価格で4,000円強の価格で数冊挙がっていますが、これは正当な価格。←古書街散歩趣味の経験で言ってます。

 

似たようなもんで創作家の書いたもので言うと、

 

『定本 映画術—ヒッチコック・トリュフォー』

『定本 映画術—ヒッチコック・トリュフォー』の商品写真これはトリュフォーヒッチコックと対談して、各作品一個一個丁寧に制作に当たってのもろもろを聞き出すというもの。映画好きには、これは読んでおけ!な一冊ですが、得に映画好きでなくても示唆深いもの。

監督と言う立場の人が、かなりいろいろなことを考えて作っているのだな〜というそのいろいろな話が面白く。なにかを製作するに当たって、やっぱり、トップの人間がすっごい細かに指示しないとできないんだろーなーとかなんとか実生活への応用もいろいろ考えさせられるでしょう。

組織を運営するに当たって、一番早いのはヒューマン・コンピュータなんだし、調整を解決できるのはその権力を持っている人ですから、そりゃそうです。では、まわりの人をどう活用するか、、、どうやって自己肥大化妄想を避けるか・・・この本の中にはその辺はそれほど書かれてはいないのですが、これに限らず映画監督の本を読むとそんなことを考えさせられます(ご参考『小津安二郎物語』)。

映画監督は、創作家といっても集団作業をするので、自らの作業を言語化することが多いのでしょうか?これを読んでも、照明や音声やその他もろもろの実作業にかかわることで語られなかったことは幾らでもあると思いますが、面白い読み方はいろいろできる本です。

 

同じよーなもんで、

 

宮崎駿『出発点 1979〜1996』

宮崎駿『出発点 1979〜1996』の商品写真わたし必ずしも宮崎サンの作品のファンではないけれど、この宮崎駿著『出発点 1979〜1996』大変感心しました。徹夜で読み切ってしまいました。

この本見方によっては、すごく示唆が多いと思います。なぜか?

宮崎氏は近年の日本では希に見る、「自分で会社もって、作りたいものを作って、メジャーで世界的に成功した人」ですよね。宮崎氏自身がそれで大富豪になったわけではなさそーなのは、さまざまな業界構造があるけれど、実は起業家ですよね。

マーケティングっていいかたするとすごく安っぽくなりますが、そこで宮崎氏がやってきたことを見ると − どこにお客さんを想定しているかとか、根本的なメッセージをどう置いているかとか、部下の扱いはどうしているかetcetc − 実はマンガ映画の話に限らないのではないでしょうか?

ジョブスのStay Hungry, Stay Foolishの演説に感心した人なら、日本にまさにStay Hungry, Stay Foolishな人が居たんだな〜なんて思ったり!?

自分にはまんが映画の創作に限らず示唆深いものでした。

最近、続巻と言って良い『折り返し点 1997~2008 』も出ました。早速注文したところです。

 

さて、最後はクラシック音楽系!

 

ブリューノ・モンサンジョン編『リヒテル』

ブリューノ・モンサンジョン編『リヒテル』の商品写真これはブリューノ・モンサンジョンというフランスの映像作家がスヴャトスラフ・リヒテルという20世紀のロシアの大ピアニストにインタビューして出来た本。リヒテルは正規の音楽教育を20前後で初めて受けたというかわった経歴のピアニストで、激しさと優しさのふり幅が大きく、ほんとに霊妙としかいいようがない不思議な瞬間を作る人。

前半が、そのインタビューを元にしたリヒテルの自叙伝になっていて、後半はリヒテルが書き残した寸評集という600頁。高いけれど、クラシック音楽の入門としては、実は大変いい本と思っています。

リヒテルの自叙伝部分は、音楽家としての成長の物語も面白ければ、20世紀前半のロシアでの生活のあれこれがあちこち垣間みられます。リヒテル自身ドイツ系の住民で、東ヨーロッパにおける複雑な民族の事情などもいろいろ想像できます。師匠であったネイガウスの関係は、美しい師弟関係とは確たるものかとこれまたいろいろ考えさせられます。

後半の寸評集は、勿論リヒテルの主観にそったものですが、名曲案内、名録音案内として実にいい本。名録音に疑問を呈したり、こちらでこういって、あちらでああいうことに、「我ながらへんなことを言うけれど」と矛盾を発見したり。。。これを片手に、いろいろ聞いて行くなんていうのは、クラシック音楽とのいい出会い方になるのかな〜と。

先日も、どこかの放送で、カラヤン特集やってました。クラシック界には、指揮者カラヤンとピアニスト グールドしかいない・・・なんてことはあり得ないのですが、TVでは極論そんなメッセージばかりでなんだな〜〜〜と。カラヤンもグールドもそれぞれスコアをよく読んで、片や華麗さを追求、片や既存の演奏にはない新たな道を探った音楽家でありましたが(←あまりに簡単なまとめですが)、他にもいい人、ほんとうにすっかり聴き入ってしまって、時間もわすれるよーな演奏家はたくさんいます。そんなごった煮の世界への入り口には、敢えてごった煮でいろいろ書いてあるこのブリューノ・モンサンジョン編『リヒテル』から入るのも手です。

スマートに描いたものが、単に単純で乱暴な切り捨てからなることはよくあること。複雑なもんは、複雑だな、、、と複雑さの取扱に慣れるのもわるいこっちゃあるまいってなものです。。。多分。

 

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芸術家の本が多くなりました。。。

・・・ビジネス書とかなんとか挙げないのは、そういう話は幾らでもころがっていると思うのが一つと、どーにも私の癖で、「一銭にもならないことに価値を見いだしてないと信頼できない」ということがあるからです。損得で割り切れないところに価値があるなー、それってなんだろー、、、と時間とお金を掛けない人となんか話が合わないので、、、なんて考えてるから、こんな風に「それ読んでなんなの???」みたいな読書案内になったりするのかな、、、といって、単なる娯楽でもないです。

あと、入門書の類いは意図的に切ってます。

では〜

 

p.s.:愚生の推薦図書が気になってしまった方がいらっしゃったら、右サイドバーのカテゴリーの書評をご参考に〜